「僕はまだ勉強中なんですよ。」
森林組合おわせ 建築士 濱田長宏
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まわりの職人さんが経験でわかっていることを、自分で調べて理解する。
おわせ森林組合は、建設中の熊野古道センターに供給する木材全て、山元からの履歴を追い、強度を計測し、示すことにした。濱田さんはその中心を担う。莫大なデータ量を扱う。
「会の他のメンバーは体感でわかっていることがたくさんある。僕はそのほんの少ししか知らないから、調べる。」ただ、木材は計測してもものによって強度は違うから、あくまで“傾向”しかつかめなかった。それでも、長年の経験に基づいてものをいう職人たちだけでなく、このように計測して数値化した形でも示されると、消費者にはわかりやすいだろう。
20歳の頃、濱田さんは建築をやっていこう!と、名古屋の設計事務所で働いていた。建築が盛り上がっていた時代だった。しかし、地元で山の管理をしていた父が他界したため、海山に戻り森林組合に入った。はじめは山仕事をしていたが、組合に円柱加工場ができ、そこに移った契機に2級建築士、その2年後には1級建築士の資格を取得した。
“ヒノキの強度が高いことが示せれば1辺12cm必要とされている柱角は1辺10.5cmですむ。柱は細いほどきれいだし、その分通路が広くなっていい。”とか、“節のない建物の美しさのPRを”“柱のラインがしっかりわかるものを”などと、最終的な構造物の間取りやデザインが頭にあり、また、“今の建築”というものを考えている設計士だからこそ出てくる発想がある。
自ら山林所有者でもあり、地元の職人さんからは“哲学”を学んでいるという濱田さんは、“山の立場からの建築士”として、尾鷲ヒノキの可能性を広げてくれるのではないか、そんな気がした。